Home / 青春 / 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通 / 第1部 二章【闇メン】その4 第四話 トイトイ偽装

Share

第1部 二章【闇メン】その4 第四話 トイトイ偽装

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-10-27 18:28:04

24.

第四話 トイトイ偽装

 この日の椎名の麻雀はすごかった。特に強烈だったのはこの仕掛け。

 親でポンポンと仕掛けてこんな手。

椎名手牌

四伍11999(赤伍伍伍)(中中中)

ドラは9

 ポン跨ぎのいい待ちとは言え読める相手から見たら染めを警戒しそうな切りになっていたので三-六は出そうな牌ではなかった。それに加えて工藤が5巡目に六萬を捨てておりその後に字牌が出てきたことがかなり引っかかる。

 六萬は5巡目くらいじゃ普通なら安全牌残してまで先に捨てるような牌じゃない。そう、例えば三三六や三三三六から捨てた先切りなんじゃないか?

(でもまあツモればいいかー)で仕掛けた満貫だ。するとここで1索が打たれた。

「ポン」

打9

 これが椎名流奥義! トイトイ偽装の追加ポンだ。

 これを見たらマンズホンイツが違うことが判明しトイトイが本命になる。

 中を鳴いているとは言え多分トイトイだろう。そして親の中トイトイ赤には絶対に振り込めない。それにだけは当たらない牌を探すしかないと考え工藤が選択する牌は……?

打三

「ロン!」

「えっ?!」

椎名手牌

四伍11999(赤伍伍伍)(中中中) 三ロン

 そう、しっかり抑えていた三萬切りだ。

 切り順から工藤が三萬を多めに抱えていると予想し、その工藤が降りや迂回を選択するであろう圧力を与えて、かつ読ませて誘導し本来出ない牌を引き出す。それが椎名の仕掛けだった。

 韋駄天のシーナは仕掛けの天才。彼は天才仕掛け師として後の世に名を残すことになる。そして、その代名詞とも言える技がこの『トイトイ偽装の追加ポン』という技となるのであったが、この時はまだ誰も知るよしはない。

 ――8時間経過。

「ふう、疲れた。やっとリベンジ出来たよ」

「あなたぁ、すっごく強いわねぇ♡ またやりましょうよぉ」

「蘭さんでしたっけ。機会があれば。今日は楽しかったです」

「私も、楽しかったわぁ。また来てねん♪ 私は神戸蘭(かんべらん)よ」

「椎名良祐です」

 工藤は旗色が悪くなったと見るや勝ちを溶かす前に途中で帰ったが、蘭と椎名は8時間ぶっ通しで麻雀をしていた。長いと思うかもしれないが、8時間など麻雀をしていればすぐなのだ。

 工藤も倒し、蘭にも勝ち、満足いく戦績で凱旋する椎名だった。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 三章【護りのミサト!】その1 第伍話 椅子の高さ

    38.第伍話 椅子の高さ「いらっしゃいませー! あれ、トキオさん今日は四名様(セット)ですか?」「いや、こちらのお2人とは今エレベーターで偶然一緒になっただけです。オレらはいつも通りフリーで」「そうでしたかぁ、失礼ですがお2人は当店初めてのご利用ですか?」「はい」「はい」「ではルール説明だけ先にしちゃいますねぇ。ちなみにドリンクサービスは当店では行っておりませんので、お飲み物をご希望の方はそちらの自販機でご購入下さぁい」(タダじゃないんだ……)(まあ、飲み物屋ってわけじゃないんだからコレでいいのかもね)(それは一理ある!) おしぼりの提供も希望された方にのみ渡す方式をとっており、そのような雀荘はミサトもユキも初めて見た。とにかく経費を節約している。新しいスタイルの雀荘だった。──────「……はい、ルール説明は以上です。これ以外でご不明な点がございましたらご質問をよろしくお願いしまぁす」(まぁ、ないかな)「大丈夫です」「では、ゲームお待ちの四名様。お待たせ致しました! こちらの卓へご移動下さぁい」(ついてるわ! いきなり最強との対決じゃないの)(私も足を引っ張らないように頑張るね!)「井川プロ。お手柔らかにお願いします」「いや、こちらこそ。よろしくお願いします」 そう言って席に座ったゴールデンコンビの椅子の高さが2人の雀力の高さを表していた。(! この2人…… 椅子が高い) 強いプレイヤーは椅子の高さひとつから違いが分かる。自分の手などは常に

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 三章【護りのミサト!】その1 第四話 新宿のゴールデンコンビ

    37.第四話 新宿のゴールデンコンビ 新宿エリア4日目。ホテルや漫画喫茶で休憩などしながら雀荘で戦う生活にも慣れてきた2人にとある人物の情報が入ってきた。『新宿のゴールデンコンビ』 という通り名の2人組がいるらしい。詳しい話はその情報提供者のおじさんにも分からないが新宿で強い雀士といったらその2人なんだそうな。 噂話をもとに聞き回っていたらその2人はどうやら低レートの雀荘に出入りするらしいと判明した。「なーんだ、低レートなら私でも大丈夫かな」とユキはホッとして聞いていたが。「いや、油断したらダメだぜ、とんでもない強さなんだからよ。だいたい、この2人がなんで低レートを好むか聞いたら戦慄するぜ」と情報を提供してくれた方が言う。「なぜですか?」「低レート雀荘なら上限値なしで点数叩けるからなんだよ。60000点終了が好きになれない。それだけなんだ」 この頃、一般レートの店には『60000点終了』というルールが普及していて、60000点持ちが出てしまうとゲームが途中で終わるようになってしまった。回転率を上げるための新ルールだ。「それじゃ、低レートでやるのは、ただゲームを最後まで楽しみたいだけ?」「そうなるな」「新宿の最強コンビと噂されるに相応しい2人組ね。面白い!」「あと、その2人。コンビと言われてるけど一切コンビ打ちはしないって噂だ。まあ、アンタたちもそれは同じか」「ますます面白いわね。手始めに麻雀アクアリウムの靖国通り店でも見てみようか」とミサトが提案した。今いる場所から近いのでそう言ったが。 

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 三章【護りのミサト!】その1 第三話 これが井川ミサトの麻雀です

    36.第三話 これが井川ミサトの麻雀です 対局開始してものの数分で井川ミサトはその高い技術を見せつけてきた。東3局4巡目ミサト手牌四伍④④④12345北北北 6ツモ「リーチ」打北(あれっ? てっきり④筒切りだと思ったけど)鉾田がユキと一緒になって後方から眺めている。(ポコタさんの言いたいことは分かります。④筒も北もまだ1枚残っているからアンカンして※テンパネのことを考えたら北残しの方が高くなるってことでしょ)(そうそう、僕なら絶対に符が高い方にとるけど。あとホコタね) すると2巡後に下家からもリーチが飛んでくる。「リーチ」下家手牌三三六七八⑤⑥4566782巡後ミサトツモ番ツモ④「カン」 そう、ミサトは後々引いてきた時危険な④筒をアンカンで出ないようにするために北を捨てていたのである。(見ましたか? これが井川ミサトの麻雀です) ユキが自分の事のように自慢する。(まいったな、僕ならここで放銃だ。さすが『護りのミサト』と言われるだけはある) しかし、その後……ミサトのツモ番ツモ⑦「ロン」

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 三章【護りのミサト!】その1 第二話 麻雀のメッカ

    35.第二話 麻雀のメッカ「最初の行き先は新宿歌舞伎町よ」「ええ!? 最後に行き着く先みたいなイメージあるけど!」「だからこそよ。私たちの麻雀は最高峰クラスのものでありその技術は歌舞伎町ですら通用する。それでも私たちはノーレートや低レート、競技麻雀をする。なぜならレートに関係なく麻雀を愛しているから。そう主張するには最初に歌舞伎町制覇するのがいい」「なるほど、ハイグレードなステージから逃げて初心者講座やってるというのでは説得力がないということね。たしかにそうだ」「……ふふふ、できるかな? 言うのは簡単だけど、実際問題新宿歌舞伎町は麻雀のメッカ。レベルが高いに決まってる」 最初の行き先は歌舞伎町という事で決定となった。「ねえ、ミサト。せっかく車も買ったけど新宿は電車で行かない? 駐車場代も高いだろうし……」「そうね、じゃあ最初の旅は都内をぐるぐる山手線の旅にしましょうか」「えー面白そう」「とりあえず、1週間! 1週間の雀荘巡りで収支をプラスして帰ってくる。これが最初の目標にしましょう。できる? ユキ」「私だって強くなったんだから。やってみせるわ。ミサトにだって負けないんだから!」「おーおー、大きく出たな。頼もしい限り! よーし、じゃあ明日の朝10時に駅に待ち合わせでいいよね。そしたら今日はよく寝ること! 明日から修行の旅だかんね!」「オッケー」 まずは新宿歌舞伎町!────── 2人は

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 三章【護りのミサト!】その1 第一話 打倒! 財前姉妹!

    34. 井川美沙都を(いがわみさと)は守備力で右に出る者はいないとまで言われた一流の女流雀士だ。 その実力は誰もが認める所だが、しかし大きな勝負で優勝するのはいつも白山詩織(はくざんしおり)か財前姉妹(ざいぜんしまい)だった。そのことがミサトは悔しくてたまらない。 自分の麻雀に限界を感じ。今のままを繰り返した所でナンバーワンにはなれない。そう悟ったミサトは自分の殻を破るための冒険の旅に出ることを決意した。 これは【財前姉妹】の後の世界をミサトを主役として書いた冒険の物語!三章 護りのミサト!~女流雀士冒険譚~その1第一話 打倒! 財前姉妹!『優勝は井川美沙都プロ!』ワアアア! ワアアア! ワアアア!パチパチパチパチパチパチパチパチ!! 大歓声と拍手の雨だ、とても誇らしい。私は優勝したんだ。(ん? 優勝した? そうだっけか? 何で優勝したんだっけ。思い出せない……)──────「ハッ!」「あっ、ミサトおはよう」「……あーー……ユキ、おはよう……夢、か……」──── 私は井川ミサト。デビューして即で新人王戦優勝。その後も数々の大会で決勝

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通   第1部 二章【闇メン】エピローグ そして伝説へ

    33.闇メン エピローグ そして伝説へ 結局『ラッキーボーイ』は閉店し、移転することは無かった。椎名は次第に仕事が減ってきたので渡邉さんに頼んで長期休暇を貰い旅打ちでもしようと思い立った。 たまにはこういうのもいい。ヤシロが鼻歌でよく歌っていた『戦場の足跡』という曲を聴きながら、気ままな旅をする。カバンには日吉オーナーから貰ったキーホルダーをつけて。 しかし、その行き先でキーホルダーを落としてしまう。すぐに気付いて引き返すと中学生くらいの少女がそれを拾ってとても興味ありげに眺めていた。「綺麗……」(これ、麻雀牌ってやつかな。真っ赤で宝石が付いてて。素敵だな)「あ、あった! ゴメンそれ僕の!」そう言う椎名の外見は細くて清潔感がありシャキッとした服装の真面目な好青年という印象を受けたので麻雀牌を落としたのが彼だというのが少女にはちょっと意外だった。(なんか、ギャンブラーとか、チンピラとかとは真逆みたいな印象の人だな。麻雀ってこういう人もやるんだ……)「キーホルダーだったんだけどとれちゃったか。気に入ってたんだけどな」 牌の上部にはネジ穴のようなものがあいていた。「お嬢さん、さっきそれじっと見てたけど、気に入ったのかな? 壊れちゃったので良ければあげるけど」「えっ、いいんですか!?」「うん。それがきっかけで麻雀に興味を持つ子が増えたりしたら僕も嬉しいし。一応とれたチェーンもあげとくね。大事にしてあげて」「ありがとうございます」「うん、いいよ。やっぱり宝石は男が持つより女の子にこそ似合うしね。きみに貰って欲しいってきっと牌も言ってるさ」 こうして、その少女は麻雀に興味を持ち、その後の麻雀界を変える程の歴史的な発見、新戦術を生み出す伝説の人物となる――◆◇◆◇牌神話テーマソング【戦場の足跡】作詞:彼方味方のいないはずの世界に味方のような顔をする奴がいる支えのないはずの場所に支えてくれそうな人がいるそんなはずはないそれは罠だ期待するな、信じるな安心するな、警戒を解くなヤツらの口をよく見てみろお前を喰らうための牙があるだろ私たちは戦士なんだ自分だけが頼りなんだ気を抜いたヤツから喰われる世界味方であるはずの男が味方ではなかったように支えてくれた人たちが全部おためごかしだったように それが世界だそこが戦場だ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status